国交省「原状回復ガイドライン」をわかりやすく解説

退去費用でもめたとき、判断の物差しになるのが国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」(再改訂版)です。要点を3つのルールに整理しました。

ルール1: 「普通に住んでいて古くなった分」は貸主負担

ガイドラインの一番の柱です。経年劣化(時間の経過による自然な傷み)と通常損耗(普通の生活でつく汚れ・すり減り)は、賃料に含まれるものとして貸主(大家さん)の負担とされています。

ポイントは「わざと・うっかり・手入れ不足(善管注意義務違反)で壊した分だけが借主負担」という切り分けです。

ルール2: 借主負担でも「新品代の全額」ではない(経過年数の考慮)

借主に原因がある損耗でも、設備や内装はもともと年々価値が下がっていくため、経過年数(実務上は入居年数で代替)に応じて負担割合を減らすのがガイドラインの考え方です。多くの内装材は耐用年数の時点で残存価値1円となる直線で計算します。

耐用年数主な対象
5年流し台
6年クロス(壁紙)、カーペット、クッションフロア、畳床、エアコン、冷蔵庫、ガス機器、インターホン
8年金属製以外を除く、主として金属製の器具・備品
15年便器・洗面台などの給排水・衛生設備
建物の耐用年数ユニットバス・浴槽、フローリング全面張替 など
考慮しないフローリング部分補修、畳表、襖紙・障子紙(消耗品扱い)、鍵の紛失時の交換、クリーニング
計算例: 3年住んだ部屋で、うっかりクロスを傷つけて張替費用が2万円請求された場合
負担割合の目安 = 1 −(36ヶ月 ÷ 72ヶ月)= 50% → 負担目安は約1万円

ルール3: 負担する「範囲」も最小限が原則

補修は毀損部分の最低施工単位が基本です。クロスは㎡単位が望ましく、広くても毀損箇所を含む一面分まで。畳は1枚単位、フローリングは原則㎡単位です。色や模様を合わせるための張替分は借主負担にしないとされています。

特約(クリーニング代など)の有効要件

ガイドラインを超える負担を借主に課す特約は、次の3要件を満たす必要があるとされています。

⚠️ タバコのヤニ・臭い、ペットによる柱やクロスのキズ・臭いは「通常の使用を超える」として借主負担と判断される場合が多い点に注意してください。

一次資料

本記事は国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」(再改訂版・平成23年8月)本編・別表2に基づいています。原文は国土交通省の公式ページからダウンロードできます。

よくある質問

Q. 6年住んだら壁紙は本当にタダになるのですか?
A. クロス(壁紙)は耐用年数6年で残存価値1円となる直線で負担割合を計算するとされているため、6年以上住んだ場合、借主に原因がある傷でも張替費用の負担目安はほぼ0円になります。ただし故意の落書きなど、使える状態のものを使えなくした場合は、元に戻す作業費(工事費・人件費等)の負担があり得ます。
Q. ガイドラインに法的な強制力はありますか?
A. 法律ではないため直接の強制力はありませんが、過去の判例や取引実務を踏まえてまとめられた国の指針であり、裁判や消費生活センターの相談でも判断の目安として広く使われています。
Q. 契約書に「クリーニング代は借主負担」と書いてあったら必ず払うのですか?
A. 特約が有効となるには、①必要性があり暴利的でないなどの客観的・合理的理由 ②借主が通常の原状回復義務を超えた負担を認識していること ③借主が義務負担の意思表示をしていること、の3要件を満たす必要があるとされています。記載があっても内容が不明確な場合は、全額有効とは限りません。